獅子座、O型、五黄の寅

元セクキャバ嬢の日常。

それが幸せ。

たくさん見てきた。

 

目の前で違う女の子を指名されても

好きでもない相手にハグされてもキスされても

何も感じなくなったのはいつからだったかな。

 

ちらりと腕時計を盗み見る。

好きでもない人との時間は、長い。

 

 

名前は聞いたそばから忘れていった。

指名で来てくれた人、あれ?この人誰だっけ?はよくあった。

ごめんね、覚えてらんない。

うまく誤魔化してぎゅっとしておけば完璧。

 

 

お人形さんみたいに静かにニコニコしていたら指名は増えた。

自己主張したら指名は減った。

 

 

分っかりやすぅい。

 

 

みんな静かにお話聞いてくれるいい子ちゃんが好きなんだね

都合のいい相手、探しに来てるだけだもんね。

私もね、お金稼ぎに来てるだけなの

だからいい子ちゃんでいてあげる。

 

 

 

極めてやったらいいんだって勘違いしてた。

笑顔の練習。嫌なことがあっても口はもちろん顔に出すな。

 

ちゃんと仮面、被って。

それでこそ、プロだ。

 

言いたいことをぐっと飲みこんで。

本当は

 

『そんなこと相談されても』

って言いたいのを

『そうなんだぁ…大変だったね』

に変換して。

 

 

『夜のお仕事をしている女の子はね、

カラダが汚れちゃうんじゃなくって心が汚れちゃうんだよ。』

いつかどこかで聞いた言葉。

 

そんな言葉が私の脳内をビシビシ駆け巡って、

そうだったのか、と今、納得する。

 

 

 

私の心も例に漏れず

汚れてしまっているんだろう。

それすらわからん。

 

 

 

目に見えるものだけが全てだった。

でも今は

目に見えないものが私を支えている。

 

 

私は今

私を大事に思ってくれる人たちのために生きている。

 

 

過酷な人生を。生きている。

 

それが、幸せでもある。